IP-PBX導入時によくあるトラブル

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IP-PBXには通話コストを抑え、容易に内線化や設定変更ができるなど、ビジネスにおける利点が多々あります。しかし、不慮のトラブルに見舞われると、メリットが感じられないばかりか、損失が発生する可能性もあります。

導入時や使用中に起こり得るトラブルを知り、より快適な運用につなげましょう。

目次

導入時に考えられるトラブル

IP-PBXは、インターネットを利用するシステムであるがゆえに、気を付けなくてはならない点があります。特にセキュリティの甘さは重大な被害につながる恐れがあるため、権限や設定を理解する必要性が高くなります。

インターネットアクセス制御の不備

IP-PBXでは、インターネットを経由し、遠隔で保守サービスを受けられる場合があります。リアルタイムで設定変更をしてもらえるため、業務を中断する必要もなく依頼しやすいのが利点ですが、アクセス制御が不十分では社内ネットワークを勝手に使用される「乗っ取り」の標的となってしまいます。高額な料金の発生、個人情報の流出などの被害を受ける可能性があります。

オフィスの電話システム全体を守るためにも、外部からアクセスできる状態になっていないか必ず確認しましょう。また、管理権限にアクセスする際のID・パスワードが初期設定のままだったり、単純すぎたりしても不正アクセスの危険性が高まります。遠隔の保守サービスを利用するにあたっては、自社と業者のアクセス権限について、明確に説明できる業者を選ぶのが賢明です。

一部でネットワークにつながらない場合がある

IP-PBXの導入時に、それまで使っていたパソコンが一部ネットワークに接続できなくなる場合があります。ルータ機能を持つIP-PBXでは、LANに接続される電話やパソコンなどの端末に、自動でIPアドレス(ネットワーク上の端末の住所)を割り当てる機能を備えているものがあります。IP-PBXで割り当てるIPアドレスに端末が対応できないとインターネット接続ができません。

現在、一般的に使われているインターネットの通信規約は、「IPv4」という1990年代後半からあるプロトコルです。割り当てできるアドレスの数は無限ではなく、IPv4で機器をインターネットに直接接続できるのは最大42億台となっています。

これに対し、新しい仕様の「IPv6」が近年利用され始めています。セキュリティが強化され、IPv4をはるかにしのぐ数のアドレスが使えます。アドレス数の余裕が少なくなったIPv4に代わる規約として注目されますが、互換性がないことが導入の障壁になっています。上記の不具合は、IPv4を利用していたパソコンが、自動で新しく割り振られたIPv6上のアドレスに対応できず障害が起きたと考えられるケースです。このような障害が発生した際は、LANの差し替えや切り替えなどで対処します。

ネットワークがループし、使用できない

有線LANやルータを接続する際、誤ってループ状態にしてしまうと、データがその配線を循環し続け、最終的にはシステムがダウンしてしまいます。IP-PBXは大掛かりな電話工事が必要ないため、業者に依頼する作業が少なく済むのが特徴です。特に、導入時にLANなどの配線を自社で行う場合は注意しましょう。IP-PBXに限らず、配線のループはネットワークの障害を引き起こします。

止まらないループを防ぐ制御手法に、「スパニングツリー」があります。ループ状の配線で、普段は片方を使い、もう一方をトラブルが発生したときの切り替え用として制御します。ループによるシステムダウンを防ぎ、いざというときの配線を準備できる利点があります。また、IP-PBXの冗長化でも、一部でトラブルが発生した際に予備の回線に切り替えて継続利用できます。電話の使用台数や席替えに伴う移動が多く、配線の変更によるトラブルが不安な場合は、これらの対策を取ると良いでしょう。

運用中に考えられるトラブル

運用のちょっとした不調は、電源を入れ直すなど、ユーザ自身で対応できることもあります。無理のない範囲で対処し、原因に見当をつけてから保守サービスを依頼しましょう。

LANケーブルがショートする

配線が込み入って負荷がかかったり、LANケーブルが備品や什器の下敷きになっていたりするとショートしてしまう場合があります。不具合が発生した電話機のケーブルを確認し、原因とみられる箇所があれば取り除きます。電話機を再起動、接続されているLANの状態を確認し、それでも解決しなかった場合は他の箇所も確認するか、保守サービスへの問い合わせを検討しましょう。

電話機本体の故障

電話が不通になってしまった場合、システム全体の故障か、電話機そのものの故障か確認しましょう。1台だけ不通のものがあれば、別の電話機に接続されているLANケーブルと入れ替えてみて、状態を確認します。LANケーブルの差し替えで使えるようになればケーブルや接続の不調、つながらないままであれば電話機本体の問題と考えられます。保守サービスを利用する際は、不具合の箇所を絞り込んでから伝えると、迅速な解決に役立ちます。

音声のトラブル

運用を開始してみると、通話ができないほどではないものの、ハウリングや音声の遅延といった音声のトラブルが発生することがあります。改善には音質の良さを確保できるスイッチを導入するほか、パソコンと同一のネットワークを使用していることでデータのやりとりが多くなっている場合には、ネットワークを切り替えたり、回線の容量を再検討すると良いでしょう。
近年、通話品質は大きく改善されており、業務に支障のない製品が多くなっています。あまり懸念する必要はありませんが、トラブルが生じた場合は上記のような原因を探ってみましょう。

スイッチ機能の不具合

IP電話機を使用している場合、回線からのデータの送り先を判断するスイッチングハブが接続されていることがあります。電話機本体やLANケーブルに異常がないときは、スイッチングハブの状態を確かめましょう。軽微な不具合は、電源を入れ直したり、ケーブル類を接続し直したりすることで解消されるケースもあります。

まとめ

IP-PBXの利用で考えられるトラブルは、ユーザが対処できる小さな不具合から、損失を招きかねない重大なものまで考えられます。保守対応で頼れるベンダーやメーカーを選び、スムーズな導入・運用を実現しましょう。

カテゴリ:お役立ち情報

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