初期IP電話と最新IP電話

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オフィスの電話システムとして、近年IP-PBX製品の注目が高まっています。IPネットワークを利用した電話サービスは一朝一夕で広まった技術ではなく、長年かけて発展している技術です。

ここでは、その特徴や変化について説明します。

目次

IP電話が広まりはじめたのは2002年

総務省は2002年、IP電話に11桁の「050番号」を割り当てることを発表しました。一定の通話品質を満たしたIP電話に与えられる専用の番号です。さらに一般的な加入電話(以下、加入電話)と同等の品質であると判断されれば、市外局番から始まる10桁の「0ABJ番号」の選択も可能になっています。

電気通信事業報告規則によると、IP電話とは「端末系伝送路設備においてインターネットプロトコルを用いて音声伝送を行うことにより提供する電話の役務をいう」と定義されています。端末などに接続される音声の伝達方法が、IPネットワークによるものであるということです。

当時、IP電話から加入電話への発信はできましたが、IP電話が一般的な電話から着信するには専用アダプタなどが必要となり不便でした。総務省の発表の翌年、この点の対応がなされ、問題なく発着信ができるようになりました。そのため、前後してIP電話市場に参入する企業が相次ぎました。

IP電話サービスの競争が過熱し始め、多くの企業が提供していたのは個人向けの製品やプランでした。そのような中、東京ガスがIP電話機2万台、最終的に100拠点での導入を決定し、企業がIP電話サービスを導入していくきっかけとなりました(※)。このIP電話機の発着信の制御には、IPネットワーク上で稼働し、シンプルなプロトコルであるSIPが用いられていました。

音質の課題

IP電話の音声通話の品質は長く課題となっており、固定電話より音質が劣るイメージがあるかもしれません。しかし、通話品質は近年大きく改善されてきています。IP電話が普及し始めた頃よくみられた遅延やゆらぎといった現象は、IPネットワークでデータを送る方法が関連しています。

IPネットワークで音声を送る方法

1つの回線を占領して音声データを送る従来の電話線と異なり、IPネットワーク上ではデータがパケットに分割されて送られます。一連の大きなデータを、小さなデータに切り分けて運ぶイメージです。遅延は音声データをデジタル化し、IPパケットにして送る時間が必要になるために起こります。

また、データを分割して送信しているため、使用するIPネットワークの通信が混み合っている場合などは、パケットの到着にばらつきが出る「ゆらぎ」が生じることがあります。同様に、ネットワークが混雑しているとIPパケットが途中でなくなってしまう「パケット・ロス」が起こる場合もあります。

このような状況が発生すると、音声が遅れて聞こえたり、途切れてしまったりと、通話に支障が出ることがあります。音声の通信量に対して回線の容量が少ないと、音質は低下しやすくなります。回線の容量が少なすぎる場合には、追加の検討も必要です。また、ルータにおける音声データの処理の優先度を高くするといった方法もあります。

高品質のIP電話は、「0ABJ」番号が取得可能に

0ABJ番号とは、0から始まり市外局番を含む、10桁の電話番号です。電話番号でおよその地域がわかり、企業や家庭の電話番号のイメージとして定着しています。携帯電話などの申し込みと同様に、電話サービスの利用を申し込む際に取得します。総務省が定める通話品質の基準の中で最も高い「Aランク」に該当し、従来の固定電話並の品質とされています。

これに対し050番号は、050で始まる11桁の電話番号で、IP電話(IPネットワークを利用する電話サービス)にのみ割り当てられる番号です。発信者番号を通知していると、相手はIP電話からかかってきたことが分かります。

クラスA(固定電話並) クラスB(携帯電話並) クラスC
総合伝達品質(R) >80 >70 >50
エンドトゥエンド遅延 <100ms <150ms <400ms
呼損率(接続品質) ≦0.15 ≦0.15 ≦0.15
  • ※R値と遅延は、表中の数値を95%の確率で満足させる必要有

参考:総務省「IPネットワーク技術に関する研究」

IP電話は当初、050番号しか利用できませんでしたが、現在では機能や品質に関して総務省が定める基準を満たすと、0ABJ番号を取得できるようになっています。0ABJ番号を取得できるIP電話(サービス)は、固定電話並の通話品質を実現しているため、音声通話に関して障壁はないといえるでしょう。

緊急通報につながらない

IPネットワークを利用するうえでの大きな課題として、緊急通報ができないケースがあります。0ABJ番号の場合は緊急通報が可能なことが番号取得の条件となっているほか、従来の加入電話のサービスを併用しているケースでは緊急通報が可能です。また、IP電話が広まった当初と異なり、IP電話サービスが一様に緊急通報ができないのではなく、現在では光回線などでも通話可能なサービスがあります。

なお、110番・119番への発信が可能なサービスでも、フリーダイヤルやポケットベルへの発信はできないことがあります。IP電話サービスの導入の際は、利用する製品、回線が緊急通報可能か確かめておきましょう。

まとめ

IP電話サービスは、従来より通話料が安くネットワークの構築が容易など、多くの利点があります。一方、通話品質や発信できる番号などの面で、すべてのサービスが利用者に必要な品質を満たしているとは言い切れません。取得できる番号、発信可能な通話を確認し、IP電話サービスの質を見極めて利用しましょう。

カテゴリ:お役立ち情報

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