経営者が考えるべき電話インフラの基礎知識

  • はてなブックマークに追加

オフィス移転や起業など、新たにビジネスの拠点を築くときには多くの設備投資が必要です。その中でも電話インフラは、オフィスの利用開始時から必要になり、初期・運用コストともに事業に大きく影響します。

この記事では、小~中規模の電話導入で押さえておきたい知識を紹介します。

目次

小規模でも、業務用の電話番号を

新しいオフィスに入居しても、すぐに通常業務を開始できるわけではありません。レイアウトを決定し、オフィス家具や什器を揃え、事務用品カタログの利用を始めるなど、種々の手配や申込みがあります。そこで、他の設備に先んじて必要なのが電話インフラです。

起業した場合は様々な手続きや顧客開拓のための営業電話として、オフィス移転や支店の進出の場合は、これまでの顧客や本社などとの連絡に必要です。特に個人事業では、私用の携帯電話や家庭で使用している電話番号のままだと、経営が成り立っているのか取引先に不信感を抱かれてしまうおそれもあります。プライベートの個人情報を守り、今後の信頼を得るためにも、会社としての電話番号を取得しましょう。

0ABJ番号と050番号

0ABJ番号とは、0から始まり市外局番を含む、10桁の電話番号です。電話番号でおよその地域がわかり、企業や家庭の電話番号のイメージとして定着しています。携帯電話などの申し込みと同様に、電話サービスの利用を申し込む際に取得します。既存の電話番号がある場合、移転先で同じ番号が利用できるか確認しておくと、今までの取引先へ連絡先変更を周知する手間が省けます。

050番号は、050で始まる11桁の電話番号で、IP電話(IPネットワークを利用する電話サービス)にのみ割り当てられる番号です。発信者番号を通知していると、相手はIP電話からかかってきたことが分かります。IP電話はかつて050番号しか利用できませんでしたが、現在では機能や品質に関して総務省が定める基準を満たすと、0ABJ番号を取得できるようになっています。通話品質や、0ABJ番号を使用することへの信頼感をふまえると、オフィスの電話番号は0ABJ番号を取得するのが無難ではないでしょうか。

0ABJ番号と050番号については、「0ABJ型IP電話と050型IP電話の違い」で詳しく解説しています。

電話システムを導入する

電話システムを導入するにあたっては、導入コストが低く、かつオフィスの規模に適した製品の検討が必要です。

ここからは、①電話の発着信制御を担うPBX、②様々な電話機、③保守管理、④電話システムの拡張性について、ポイントを整理します。

①電話の発着信制御を担うPBX

オフィスの電話システムの中核となるのが、複数の外線通話や内線・転送を制御するPBX(Private Branch eXchange、構内交換機)です。PBXには従来の電話線をつなぐレガシーPBXと、インターネット回線(IPネットワーク)上で制御を行うIP-PBXがあります。IP-PBXはハードウェア型、ソフトウェア型、クラウド型サービスに大別されます。

レガシーPBXは従来から長く活躍している信頼感がありますが、設置や電話の設定変更には専門業者による作業が必要になり、工事も大掛かりです。また、レガシーPBXが直収できる従来の公衆電話網は、2025年をめどにIP回線への移行が検討されています。

IP-PBXはIPネットワーク上で稼働する特徴を生かし、Web管理画面から設定変更を行えるものがあります。システム導入やオフィスの電話機の追加・席替えの際に工事をする必要はなく、管理が比較的楽にできます。また、PCと連携してデータベースや顧客管理システムを利用したり、IPネットワークの接続により離れた複数の拠点を内線化したりすることが可能になるなど、従来にはない機能を備えています。

ハードウェア型、ソフトウェア型の特徴

ハードウェア型は、PBXの専用機を設置して使用するタイプです。従来のPBXに比べて小型で、専用機は電話交換に加えルータ機能なども備えています。オフィスの電話の数を増やす際、同じハードウェアのPBXをそのまま追加するか、収容台数の多いPBXに変更する必要があるかは、メーカーによって異なります。

これに対しソフトウェア型は、IP-PBXのソフトウェアを汎用サーバにインストールして使用するタイプです。物理的な主装置は存在しないため、システム導入に時間がかからないことがポイントです。主装置と電話工事が必要なく、初期費用も比較的安いのが特徴です。システムの改善はソフトウェアのアップデートで行えるため、老朽化することもありません。

クラウド型はこれらの機能をインターネットを通じて提供するもので、初期費用が少なく導入も比較的簡単ですが、セキュリティの問題や、通信の不具合が発生したときに対処が難しいという課題があります。

②様々な電話機

通話コストを削減するには、距離に応じて通話料が高くなる従来の電話線ではなく、全国一律で割安な料金設定が多いIPネットワーク(光回線などが含まれます)の選択が必要になってきます。IP-PBXとそれに対応するIP電話機では、レガシー電話機と異なり、追加の装置を介さずIPネットワークを利用できます。回線の決定と同時に、IP電話機の導入を検討しましょう。ソフトウェア型IP-PBXを導入する場合、電話機の使用台数分のライセンスを購入して利用します。

IP-PBXに対応できる電話機にはいくつかの形態があります。従来のビジネスフォンと同じく卓上で利用するIP多機能電話機では、電話番号の割り付けやマルチラインの機能が従来と異なる場合がありますので注意しましょう。同じくコードレス電話機も、従来と形はあまり変わりませんが、機能面を確認して導入しましょう。

USBヘッドセットやモバイル型受話器などを使う、PCソフトフォンもあります。両手が空くために作業効率が上がり、PC画面上の顧客情報から発信を行うなど、電話業務が多いケースに適しています。コールセンターや問い合わせ窓口を設置する際に取り入れると便利です。

また、スマートフォンや携帯電話も快適に利用できます。これらの端末を内線電話として利用する方法に、キャリアの提供するFMCサービスがありましたが、スマートフォンではアプリをインストールする方法も利用できるようになっています。スマホ内線化ができるIP-PBXを導入すれば、外出する社員に支給する端末で、新たな電話サービスを追加したり、キャリアを選んだりする必要がありません。

自社の働き方に合わせ、業務効率化につながる電話機を使用しましょう。

③保守管理

会社の規模が大きいと、電話システムの保守管理は全社で統一されていて、オフィスごとの判断ができなかったり、経費の計上に本社を通さなければならず、頻繁な調整は困難になったりするといった課題があります。小~中規模の企業では、そのような硬直性がなく電話インフラの整備をできるのが強みです。

レガシーPBXの設置・設定変更には有資格者によるPBXの操作が必要になり、費用の負担が重くなります。また、資金力の大きい他社との競争で生き残るには、営業が停滞しないよう、オフィス内のインフラのトラブルへの迅速な対応が求められます。Webから管理画面にアクセスし設定変更を行えるIP-PBXや、オンラインでの保守サービスを提供しているベンダーを選び、保守管理の手間とコストを最小化しましょう。

④電話システムの拡張性

新規に事業を始める、あるいは拠点を増やしている成長途上の企業は、社員が増加する可能性が高くなります。このような企業には、人員の増加に耐えられず、電話システムを再検討する事態を招かないよう、柔軟に電話台数を増やせるPBXが向いています。

従来の電話線では一度に増やせる通話数が決まっており、必要なときに必要なだけ追加することは難しくなっています。光回線を利用したIPネットワークではもともとの通話数が無制限となっているため、必要な数のライセンスを購入することで社員の増加に対応できます。レガシーPBXよりIP-PBXの方が電話機の追加に比較的柔軟に対応できますが、製品の最大搭載数を超えないように注意しましょう。物理的な制約のあるハードウェア型より、アップデートで機能改善を図れるソフトウェア型では、よりカスタマイズしやすい傾向があります。将来の事業拡大を予想し、現在の社員数より余裕のあるPBXの製品を選びましょう。

まとめ

小~中規模の企業にとって、電話インフラは適切に導入すれば経営の後押しに、実情に合わないシステムでは手間やコストが重い負担になりえる存在です。PBX導入のポイントを押さえ、業務の効率化を目指しましょう。

カテゴリ:お役立ち情報

  • はてなブックマークに追加