オフィス商材の減価償却と入れ替えノウハウ

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日々の快適な業務環境は、多くの時間を過ごすオフィスの設備によって作り出されます。オフィス家具、什器、OA機器は活躍とともに段々と劣化し、入れ替えが必要になってきます。

本記事ではオフィス商材の入れ替え時に役立つノウハウと、会計処理の減価償却について紹介します。

目次

減価償却の考え方

ビジネスで使用する資産には、建物や車、オフィスの設備のように、時が経つにしたがって価値が減少するものがあります。減価償却とは、このような資産を取得した費用を一度にすべて計上するのではなく、資産を使う全期間にわたって経費として計上していく手続きです。

通常、オフィスの設備や建物といった資産は、数年から数十年の期間で使用します。取得時に費用を全額払ったとしても、その資産の価値(=費用)を消費し終わるのは、資産を使い終えるときです。そのため、使用できる期間全体に費用を配分して計上をすることで、より実際の状況に近づけて会計処理ができるのです。

減価償却の計算と耐用年数

減価償却費の算出には、定額法や定率法が用いられます。減価償却にかかる資産の使用可能期間を耐用年数といい、対象となる資産について法律でその年数が定められています(法定耐用年数)。

定額法

減価償却費 = 取得した金額 ✕ 定額法の償却率(省令による)

→ 減価償却費が毎期一定額になり、費用負担を公平にすることができます。

定率法

減価償却費 = 未償却残高 ✕ 定率法の償却率(省令による)

→ 償却額が次第に減少していく方法で、機能面の減価が発生しやすい機械などの減価償却に適しています。

オフィスの資産取得、利用、入れ替えを行う際、減価償却と法定耐用年数が重要な役割を果たしています。

オフィス商材の耐用年数

オフィスで使用される主な資産の耐用年数を紹介します。

試算の種類・用途 耐用年数
木造・合成樹脂造の建物(事務所用) 24年
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリートの建物(事務所用) 50年
給排水・衛生設備、ガス設備 15年
一般用の自動車のうち、小型車(総排気量0.66リットル以下) 4年
事務机、事務いす、キャビネット(主として金属製) 15年
冷房用・暖房用機器 6年
パソコン(サーバ用以外) 4年
電話のデジタル構内交換設備、デジタルボタン電話 6年
ソフトウェア(複写して販売するための原本・研究開発用以外) 5年
  • (参考 国税庁「耐用年数表」)

オフィス内で利用する期間や備品の入れ替え時期は、耐用年数と保守期間を目安にしましょう。例えばソフトウェアの電話システム(IP-PBX)にデジタルボタン電話機を組み合わせて利用している場合、減価償却期間はそれぞれ5年、6年です。保守期間がこれより長い場合は、その後の減価償却費は計上せず、残存簿価1円のまま計上します(平成19年4月1日以後に取得した資産の場合)。

ソフトウェアは、物理的なリプレイスではなく、アップデートにより機能を刷新することができます。バグの修正のように一部の不具合を改善するアップデートは、その費用を修繕費として処理します。一方、機能を追加したりソフトウェア全体の仕様を変えたりするようなアップデートは、「資産の価値を高める、または耐久性を増す」ものと見なされるため、資本的支出として処理します。

なお、中古資産を利用する場合は使用可能期間を見積もって計上します。減価償却期間あるいは法定耐用年数を過ぎても直ちに費用を計上できなくなったり、使用を継続できなかったりするわけではありません。

オフィス商材の入れ替えノウハウ

事業活動により発生した紙くずや廃油など、ごみの種類によって「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」において産業廃棄物に指定されています。また、産業廃棄物に該当しないオフィスのごみは事業系一般廃棄物となります。産業廃棄物を一般廃棄物として処理すると同法違反になってしまうので注意しましょう。

オフィス機器などは、事業系一般廃棄物に該当することが多くなります。廃棄の場合、自治体のルールに従い、許可業者に処分を依頼します。事業所のごみは、家庭ごみ集積所に出すことはできません。また、状態によっては廃棄以外の方法を検討することもできます。

まだ使えるものはリサイクルや買い取りに

傷みや損傷が少なく、不要になるもののまだ使える状態のオフィス家具などは、買い取りの専門店やリサイクルショップに出すことが考えられます。処分するものの中から買い取りを依頼できそうなものをリストアップし、付属品や取扱説明書などもできるだけ揃えておきます。汚れは取り除いておきましょう。

家具を選んだら、見積もりの依頼をします。買い取りの値段や手数料などは業者によって異なりますが、見積もりは無料となっているケースが多くあります。料金のかかる廃棄処分ではなく、少額であって買い取ってもらえた場合、経費の節約になります。また、買い取りができない状態であっても、無料で引き取りが可能な場合もあります。

素材によっては資源として回収も

損傷などによって家具として再利用するのが難しい場合でも、素材によっては資源として買い取りや回収をしてもらえることがあります。スチール家具は資源としても扱われるため、廃棄を検討している家具の中にスチール製のものがないか、再確認してみましょう。

OA機器は個人情報に注意

OAは「Office Automation」の略で、企業で用いられる情報機器全般のことです。パソコンなどには、自社や顧客の情報がハードディスクドライブ(HDD)に記録されています。初期化だけではHDDの情報は消えていません。処分の際はシステム担当者がデータ消去を確認するか、メーカーや自治体の回収に頼る際は確実なデータ消去を行っている業者を選びましょう。

個人情報の流出は、自社や関係者に大きな損害をもたらす可能性があります。個人情報が悪用されるおそれがないか、念入りな確認が重要です。

オフィス商材を処分する際は、買い取りなどの方法を活用することでコストを抑えることができます。また、気づかないうちに法律違反をしてしまうことのないよう、自治体や許可業者にルールを確認し、適切な処理を行いましょう。

OA機器のリプレイス手順

顧客情報や運用中のシステムを入れ替えるには、単に処分して新しいものを購入するのではなく、情報を保護し運用を途切れさせないリプレイスが必要です。オフィスの中でも重要な、電話システムのリプレイス手順を紹介します。

電話システムのリプレイス

従来の電話線を利用する電話システムから、パソコンのIPネットワークに一本化し、IP-PBXソフトウェアとIP電話機に入れ替えるケースを想定します。

  • 01.既存の電話機能の確認

    今までの電話システムの同時通話数、割り当てる電話番号、着信グループ、保留・転送設定など、引き続き使用が必須となる機能を確認します。また、電話帳などのデータは必ずバックアップを取りましょう。システム入れ替え後の電話機の台数も確定させておきます。また、IP-PBXソフトウェアでは従来型より機能の範囲が広いので、可能であれば電話に関する要望も洗い出します。

  • 02.電話回線・IPネットワークの契約内容確認

    使わなくなる電話線の契約を見直し、IPネットワーク回線の容量を、通話量に合わせて追加したり、プランの変更を検討したりします。不測の事態に備えて、1、2回線だけ従来の電話線と電話機を残しておくと、電話が完全に不通になるのを避けられます。ネットワーク変更後も同じ電話番号を継続利用できるかの確認も忘れず行いましょう。

  • 03.電話機等の処分

    IP-PBXベンダーと相談しながら導入を進めます。ソフトウェアの動作確認は予め行っておきましょう。

    従来型のPBX主装置や電話配線の撤廃は、専門の業者に依頼しましょう。情報流出を防ぐため、電話機の初期化などの処理を行います。廃棄となる機器類は、ルールに従って適切に処分しましょう。減価償却の期間中だった場合は、会計上「除却損」として処理します。

  • 04.IP-PBXシステムの導入

    今までのPBX主装置を撤去したら、IP-PBXサーバを設置します。ソフトウェアの場合主装置は必要なく、会社の汎用サーバにインストールしてシステムを導入します。個々のIP電話機は、ケーブルでルータに接続します。Web管理画面が利用可能な製品では、その場でアクセスしてすぐに設定を始めることができます。ネットワークの再構成を行うため、営業時間外に実施できると業務を中断する時間が少なくて済みます。

オフィス商材の入手方法

オフィスに備品を導入する際も、様々な方法が考えられます。

新規に購入する

オフィス家具やOA機器の新品を購入します。状態の良さはもちろん、保証をより長く確実に付けることができるのが魅力です。ただし、まとまった支出が必要になります。

中古品の購入

中古品の購入では、新品に比べて価格が安くなることがメリットです。しかし、故障のリスクや修理・交換が困難な可能性があります。損失にならないよう、できるだけ状態が良く、保証が付いているものを選びましょう。

レンタル、リース

レンタル、リースはどちらも自社の資産として保有せずに、什器などを借りる方法です。購入に比べて低い初期費用で済みますが、月額や契約期間での利用料が発生します。

レンタルは、レンタル会社が所有する什器などを、短期間使用します。中途解約も可能です。リースでは、自社が利用する什器などをリース会社が代わりに購入し、新品を利用します。中途解約ができないことが特徴です。

什器を使用する期間と費用を考慮し、最適な方法を選びましょう。

まとめ

オフィス商材の入れ替えには手間がかかりますが、工夫次第で業務効率化やコスト削減につながります。適切な方法や製品を検討し、オフィス環境改善に役立てましょう。

カテゴリ:お役立ち情報

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