IP電話回線の種類

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IP電話が音声を伝える仕組みと、IP電話回線の種類についてご説明します。

目次

IP電話が音声を伝える仕組み

従来の固定電話は公衆電話網(PSTN)を使って音声を伝えてきました。公衆電話網とは、アナログ電話回線の低周波帯域またはISDN(デジタル回線)を用いた、電話回線のネットワークです。
公衆電話網は、地域ごとに設置されている電話交換機を相互的に接続するという仕組みで機能しています。交換機の接続には一回ごとに料金がかかるため、電話先までの距離が離れるにしたがって電話料金が上がります。

ISDNは音声やデータを0と1のデジタル信号に変換して伝える公衆電話網です。1つの電話番号に対して2つの回線が使え、ノイズに強いというメリットがあります。しかし、通信速度がIP電話回線より低く、定額でインターネットの利用ができないため2002年頃を境に利用者は減少しています。ちなみに、ISDNによるデータ通信サービスは、2025年までに廃止予定です。

それに対し、IP電話はインターネット回線を使って電話先に音声を伝えます。
利用されるのはADSL・光回線・高速モバイル通信などに代表される通信速度が速いデータ通信回線で、多くの場合定額制の料金プランが用意されています。そのため、インターネット回線しか経由しないIP電話間の電話料金は距離に関わらず一定です。

また、IP電話から従来の固定電話に電話をかける場合も、電話先に最も近い電話交換機まではインターネット回線を利用できるため、加算される電話料金を抑えることができます。

IP電話回線の種類

前述した通り、IP電話の接続に用いられるインターネット回線(IP電話回線)には、「ADSL」「光回線」「高速モバイル通信」「CATV」などの種類があります。

ADSL

ADSLは、アナログ電話回線の高周波帯域を使うIP電話回線です。ユーザ側から見てデータを受信するときは通信速度が速くなり、送信するときは遅くなるという特徴があります。また、アナログ電話回線を収容しているNTTの収容局までの距離に比例して通信速度が遅くなります。

既存の電話回線を使える上に料金が比較的安いため広く普及していましたが、光回線や高速モバイル通信といったほかのインターネット回線の普及により、利用者は減少。2016年6月30日にNTTが新規申し込み受付を終了するなど、今後は廃止されていく傾向にあります。

光回線

光回線は、データを光として遠くまで送ることができるIP電話回線です。そのため、インターネット回線の中で最も速い通信速度でデータを送受信できます。さらに、電磁波の影響を受けないので安定した接続が可能です。2015年に総務省によって行われた調査では、ブロードバンド回線を利用している企業の82.0%が自社からのインターネット接続に光回線を利用していました。現在のインターネット回線の主流は光回線といえるでしょう。

なお、法人利用されている代表的な光回線としては、NTT東日本・西日本のひかり電話、KDDI光ダイレクト、NTTコミュニケーションズのArcstar IP Voice、ColtテクノロジーサービスのVoice LINE IP、楽天コミュニケーションズのFUSION IP-Phoneなどが挙げられます。

デメリットとしては、もともと光回線が通っていない場合には光回線を引き込む初期工事が必要なため、工事費用や工事を待つ時間がかかることが挙げられます。

高速モバイル通信

高速モバイル通信は、無線で利用できるIP電話回線です。3GやLTEなど携帯電話会社が提供する回線がその代表的な例です。このほかに、WiMAXなどのモバイルルータを用いて無線通信を行う回線も高速モバイル通信に含まれます。外出先などどこでも使用でき、工事がいらないという手軽さが最大の魅力です。

ただし、「場所によって通信速度が極端に遅くなったり圏外になったりする」「携帯電話やモバイルルータといった通信端末の充電が必要」などの欠点もあります。

CATV

CATVは、ケーブルテレビの回線を利用するIP電話回線です。提供元やプランによって通信速度や料金・サービス内容が異なり、中にはセキュリティサービスや、メディアを使った広報活動のサポートがセットで提供されるプランもあるなど多彩さが魅力です。

ただし、特定の地域内で展開されている場合が多く、引っ越すと利用できなくなる可能性があります。また、ケーブルテレビの回線を通していなければ、光回線と同じく初期工事が必要になります。

まとめ

IP電話の仕組みとIP電話回線の種類について説明しました。従来の公衆電話網と比べたとき、IP電話回線には通信速度が速く、料金が定額だというメリットが共通しています。

ただし、個々のIP電話回線を比べると、使用できる回線や料金体制などに多様な特徴があります。快適なIP電話環境を手に入れるためには、しっかりとそれぞれの特徴を把握することが不可欠です。

カテゴリ:IP-PBXの基礎

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