IP-PBXとIPテレフォニーの違い

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電話システムを刷新するためには、「IP-PBX」を検討すれば良いのか、「IPテレフォニー」を検討すれば良いのか戸惑うこともあるかもしれません。
本記事ではこの2つにどのような違いがあるのか説明します。

目次

IPテレフォニーは広義

IP-PBXとIPテレフォニーは、全く異なるものではありません。IP-PBXは名称の通り、IPネットワーク上で稼働する「構内交換機(Private Branch eXchange)」であり、様々な機能が含まれるものの、交換機であるという中軸の能力はどの製品も備えています。一方IPテレフォニーは、特定の機能ではなく、IPネットワークを利用する電話サービス全般を指しています。

IP-PBXとは

PBX(構内交換機、Private Branch eXchange)とは、会社の内部(Private)に、外線からの電話を振り分ける(Branch)ための交換システム(eXchange)です。オフィスでは家庭用の電話と異なり複数の回線、通話を利用するため、PBXを設置して着信や通話の制御を行う必要があります。

このうち従来の電話線(アナログ回線やメタル回線)ではなく、インターネット回線(IPネットワーク)上でIP電話機への着信などを制御するものがIP-PBXと呼ばれます。インターネット回線を使うことによりチャネル数(通話数)が無制限になり、IP電話機とは装置を介さず直接接続できます。また複数の拠点やスマートフォンの内線化も可能で、料金のかからない内線通話を有効活用できます。

従来のPBXは大型の主装置が必要でしたが、IP-PBXは小型化したハードウェア、物理的な装置のないソフトウェア、インターネットを通じてサービスを提供する形態(クラウド)などに分かれています。
つまり、IP-PBXはIPネットワークを利用する電話サービスを実現する機能であり、IPテレフォニーの方式の一つといえます。

IP-PBXについて詳しくは「IP-PBXの基礎知識」「3分でわかるIP-PBX」で解説しています。

IPテレフォニーとは

IPテレフォニーは、IPネットワークを利用した電話サービスの総称です。このためIP-PBXもIPテレフォニーに含まれますが、PBX機能を有しないIP電話サービスや、IPネットワークと従来の電話機等を組み合わせて使用しているケースでも該当します。

IPテレフォニーという呼称は、音声通話を実現するサービスにIPネットワークが利用され始めた2000年代前半頃に多く用いられました。開発され始めた段階の技術では、1回線の着信でオフィスの複数の電話が鳴るような割り付けや、レガシー(従来の)PBXと同じ電話交換や内線通話を担ってはおらず、IPネットワークを利用する1対1の通話などのサービスもあったためです。しかしIPテレフォニーは総称としても捉えられているため、現在でもIP電話サービス製品を「IPテレフォニー」として展開しているケースもあります。

IPテレフォニーの方式には、下記のような例があります。

レガシー電話機+IPネットワーク
IPネットワーク → VoIPゲートウェイ → レガシーPBX → レガシー電話機

※VoIPゲートウェイは電話回線とIPネットワークの接続部分に設置され、電話回線からのアナログ音声データをデジタルデータに、IPネットワークからのデジタルデータをアナログ音声データに変換する機能を持っています。

IP-PBX、IP電話機+IPネットワーク
IPネットワーク → ルータ → IP-PBX → IP電話機

IPテレフォニーは、かつてはPBX機能を持たない電話システムでのIPネットワークの利用や、オフィスには向かない回線数の少ないサービスなどを含む広義の単語として使われていました。現在ではIP-PBX製品が増え、対応するIP電話機も多数販売されており、IPテレフォニーのイメージがIP-PBXに近づいているのではないかと考えられます。

IPネットワークを利用していても、電話機などが従来の製品である場合、接続を仲介するVoIPゲートウェイなどが必要になり、設備のコストが増加することになります。これから電話システムの刷新を検討する場合は、「IP-PBX」と「IP電話機」に焦点を当てて複数製品を比較することを推奨します。

IPネットワーク(インターネット)の強みとは

IPネットワークの代表的な利点は、オフィスの電話システムで利用する場合、複数の拠点を結んだり、携帯電話やスマートフォンを内線化したりすることができ、通信コスト削減につながることです。レイアウト変更に、煩雑なPBXの操作が伴わないことも魅力です。さらに、電話線を使わないこの通信方法には、ほかにも大きな長所があるのです。

非常時のつながりやすさ

2011年の東日本大震災では、その被害の大きさとともに、通信の不通状態が広がったことも問題になりました。そのときすべての通信手段が一様に停滞したのではなく、それぞれの特徴によって差が生じました。

携帯電話・固定電話

携帯電話・固定電話(の音声通話)は非常につながりにくくなりました。地震で瞬時に機能が止まってしまったのではなく、個人同士の安否確認で通信量が急激に増えネットワークがダウンするのを防ぐために、通信規制が実施されたためです。また、停電が起きた地域では、基地局の非常用電源を消費してしまうと、さらに不通の範囲が広がりました。公衆電話は災害時に優先して通話ができるものの、台数が少なくなっており、大勢の被災者に安定した通信を提供することは難しくなっています。

パケット通信

携帯電話でも、音声通話ではなくパケット通信は、つながりやすい状況にありました。回線を占領する音声通話と異なり、パケット通信はデータを細かく分割して届けます。そのため、混雑により時間はかかっていましたが、音声通話よりはスムーズなやりとりが可能でした。

IPネットワーク

このような中、インターネット回線(≒IPネットワーク)は大きな打撃を受けていませんでした。
SNSで人探しや安否確認の情報が発信・共有されるケースもありました。災害時でも通信規制が行われなかった点に着目し、大手携帯会社や自治体などが、無線LANの整備に注力しています。IPネットワークを利用する通信は、災害時でもつながる可能性が高く、従業員の安否確認や情報収集のために力を発揮すると考えられます。

災害時に広範囲で停電が発生したり、基地局や無線LANスポットなどの拠点そのものがダメージを受けている場合は、どの手段でも通信が難しくなってしまうことは確かです。しかし、非常時につながりやすい方法を知り、通信網やバッテリーを確保していれば、災害発生後のわずかな時間にできることが多くなります。通話をすべて電話線に頼るのではなく、安全対策としてIPネットワークを検討することも、有益ではないでしょうか。

まとめ

IPテレフォニーとIP-PBX、そしてIPネットワークの良さについて説明しました。製品を検討する際の区別や、安全対策の選択を考えるうえで参考にしてみてはいかがでしょうか?

カテゴリ:IP-PBXの基礎

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